(VIVANT考察)国会での「別班」

「別班」については、2013年に陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」の存在を仄めかす記事が配信されたことがありました。

しかし、記事の内容の裏付けが不明であったこともあり、その当時の国会では質問主意書を通じて政府の見解が確認されたことがわかりました。

結論としては、「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」なる組織は、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない。ということのようです。

なお、衆議院では鈴木貴子議員、参議院では当時国会議員を務められていた大野元裕現埼玉県知事が質問書を提出していました。

(出典は衆議院と参議院のホームページで、この記事では行頭などの平仄を調整しています。)

衆議院

質問主意書(鈴木貴子議員提出)

平成二十五年十二月二日提出
質問第一〇六号
提出者 鈴木貴子

https://www.shugiin.go.jp/

陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する質問主意書

 本年十一月二十七日二十時十六分付インターネット記事の中で、共同通信が以下のように報じている。
 「陸上自衛隊の秘密情報部隊『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたことが二十七日、分かった。
 陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者ら複数の関係者が共同通信の取材に証言した。
 自衛隊最高指揮官の首相や防衛相の指揮、監督を受けず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは、文民統制(シビリアンコントロール)を逸脱する。」
 右報道にある「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(以下、「別班」とする。)を踏まえ、質問する。
一 「別班」に関する共同通信の報道には、陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者らの証言が含まれているが、防衛省として、右の幹部経験者らのうち誰が共同通信の取材に応じ、「別班」について証言していたのかを把握しているか。
二 防衛省として、一の幹部経験者らに接触し、「別班」に関して事情を聴取しているか。
三 二で、していないのなら、その理由は何であるのか説明されたい。
四 「別班」に関し、本年十一月二十八日午前の記者会見で菅義偉内閣官房長官は、「報道にあるような組織はこれまで自衛隊に存在していないし、現在も存在していないと防衛省から聞いている」と、その存在を否定していると承知する。小野寺五典防衛大臣も、同日二十八日午後の参院国家安全保障特別委員会で、「『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』というような組織はこれまで自衛隊には存在していないし、現在も存在していない」と、同じくその存在を否定している。右は、安倍晋三内閣として統一した認識であるか。
五 安倍内閣として、「別班」の存在を指摘した共同通信の報道は虚偽のものであったと認識しているか。
六 五で、「別班」の存在を指摘した共同通信の報道が虚偽のものであったのなら、安倍内閣として共同通信に抗議をしているか。
七 六で、抗議をしているのなら、誰が、いつ、どのような方法でどのような内容の抗議をしたのか説明されたい。
八 六で、抗議をしていないのなら、その理由は何であるのか説明されたい。
九 本年十一月二十八日の参院国家安全保障特別委員会で、小野寺大臣は「別班」に関し、「再度しっかり確認していきたい」と答弁していたと承知するが、小野寺大臣としてどのような確認作業をこれまでに行ったのか、調査対象となった者、調査にあたったものの官職氏名、調査がなされた日にち、場所、その方法につき、明らかにされたい。
十 九の調査結果は記録に残されているか。残されているのなら、それは現在、政府部内のどこに、誰の責任の下管理されているのか明らかにされたい。
十一 九の調査結果が記録に残されていないのなら、その理由は何であるのか説明されたい。
十二 本年十一月二十九日、防衛省の辰己昌良報道官が記者会見で、「別班」に関して「これ以上、今の段階で調査をやる状況ではない」と述べたと承知している。右の辰己報道官の発言は、小野寺大臣の意向を受けてのものか。
十三 防衛省として、今後「別班」に関する調査を行う考えはあるか。
十四 共同通信としては、陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者に直接取材をし、確認をとった上での報道だと承知しているが、それでも今回の報道に対し、小野寺大臣は、報道を虚偽だと考えるのか。

 右質問する。


答弁書(内閣総理大臣 安倍晋三)

内閣衆質一八五第一〇六号
平成二十五年十二月十日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 伊吹文明 殿
衆議院議員鈴木貴子君提出陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

https://www.shugiin.go.jp/

衆議院議員鈴木貴子君提出陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する質問に対する答弁書

一から十四までについて

 政府として、個々の報道について答弁することは差し控えたいが、御指摘の報道にあるような「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」なる組織については、防衛大臣が、御指摘の答弁を行う前に、陸上幕僚長から口頭で報告を受け、さらに、御指摘の答弁の後にも、陸上幕僚長に陸上幕僚監部運用支援・情報部長等への聞き取りを行わせてその内容を口頭で報告させたところ、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していないことが確認されており、現時点においてこれ以上の調査を行うことは考えていない。


参議院

質問主意書(大野元裕議員(現埼玉県知事)提出)

質問第七七号
陸上幕僚監部運用支援・情報部別班なるものが在外で情報活動を行っていたとされる事案とその対処に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十五年十二月二日
大野 元裕
参議院議長 山崎 正昭 殿

https://www.sangiin.go.jp/

陸上幕僚監部運用支援・情報部別班なるものが在外で情報活動を行っていたとされる事案とその対処に関する質問主意書

 報道によると、陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(以下「別班」という。)なるものが在外で情報活動を行っていた由である。右が事実とすれば我が国の文民統制の在り方にとっても大きな問題であると思料される。また、右報道によれば、防衛大臣の承知しないところで独自の連絡ルートで情報が報告されていたとのことでもあり、防衛省設置法第三条の任務及び第四条の所掌事務においても、防衛省がその組織等について責任を持って把握すべき事項であることから以下質問する。

一 報道された別班組織の有無について明らかにされたい。また、存在する場合は、所掌、人員規模及び予算を明らかにされたい。

二 別班が在外において情報収集の実施を開始した時期及び在外における活動の規模を明らかにされたい。また、陸上幕僚長への報告体制について併せて明らかにされたい。

三 別班に対する指揮命令系統について明らかにされたい。

四 複数の著書によると、ムサシ機関とも呼称された別班の活動資金は米軍からも提供されていた由であるが、右の事実関係について政府の見解を示されたい。

五 別班の情報は、いかなる国と共有されてきたのか、具体的に示されたい。

六 別班の情報が資金提供を受けて第三国に情報提供されたとする場合、いわゆるスパイ活動若しくは自衛隊法の定める防衛秘密の漏洩にあたるのか、政府の見解を示されたい。

七 米軍と自衛隊との共同訓練MISTの概要について明らかにされたい。

八 過去において陸上幕僚監部運用支援・情報部所属直後に長期の休職、退職あるいは他省庁・他機関への出向となった者の人数及びこれらの人数のうち、三年以内に同部に復帰した者の人数を明らかにされたい。同じく三年以内に自衛隊に復帰した者の人数を、年ごとに明らかにされたい。また、同部所属直後に海外に配転された者の人数を年ごとに明らかにされたい。

右質問する。


答弁書(内閣総理大臣 安倍晋三)

答弁書第七七号
内閣参質一八五第七七号
平成二十五年十二月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山崎 正昭 殿
参議院議員大野元裕君提出陸上幕僚監部運用支援・情報部別班なるものが在外で情報活動を行っていたとされる事案とその対処に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

https://www.sangiin.go.jp/

参議院議員大野元裕君提出陸上幕僚監部運用支援・情報部別班なるものが在外で情報活動を行っていたとされる事案とその対処に関する質問に対する答弁書

一から六までについて

 お尋ねの「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」なる組織は、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない。

七について

 お尋ねの「米軍と自衛隊との共同訓練MIST」なる訓練は、これまで行われたことはない。

八について

 お尋ねの「陸上幕僚監部運用支援・情報部所属直後に長期の休職、退職あるいは他省庁・他機関への出向となった者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、陸上幕僚監部運用支援・情報部が設置された平成十八年三月二十七日以降、同部に配属された日から一月以内に休職し、又は退職した者(退職し、他省庁等に出向した者を除く。)はいない。同部に配属された日から一月以内に他省庁等に出向した者は二十七名であり、このうち出向した日から三年以内に同部に復帰した者は十三名である。同部に配属された日から一月以内に他省庁等に出向し、三年以内に自衛隊に復帰した者の復帰した年ごとの人数は、平成二十年は一名、平成二十一年は二名、平成二十二年は一名、平成二十三年は一名、平成二十四年は三名、平成二十五年は六名である。また、お尋ねの「同部所属直後に海外に配転された者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同部に配属された日から一月以内に他省庁等に出向し、日本国外における勤務を命ぜられた者は、平成二十年に出向した一名である。


まとめてないけど「まとめ」

以上です。

ドラマの中の「別班」のミステリアスさが増した気がします。また何か確認できた情報があれば公開していきたいと思いますので、よろしくお願いします。